恵方巻と節分蕎麦
「節分蕎麦って何ですか?」とのご質問をいただきました。
節分とは季節の変わり目、本来節分は春夏秋冬4回あるのですが季節の始まりの「春」が特に重要視されています。春が重要視された理由は諸説ありますが、現在の節分の元になったのが「おにやらい」(追儺)の行事。追儺の行事が宮中で始まったのが、慶雲3年12月晦日夜の戌の刻、立春の前日(節分)だとされています。昭和初期までの東京では、節分の厄払いとしてそばを食べるという習慣があり、江戸の昔から節分にはそばを食べ清々しい気持ちで春を迎えたと伝わっています。
古来三角形は邪気を払う力を持つと信じられ、ソバの実の形が三稜角(三角錐)「三稜」で「みかど」と読み「帝」(みかど)の御威光で魔を滅し、豆まきの豆を歳の数だけ食べることと同じ効果があったようです。
昔から蕎麦は精進料理として広く認知され、江戸時代初期から寺院などで「寺方蕎麦」として蕎麦切りがふるまわれていました。今でも蕎麦屋の屋号に「庵」が多いのは浅草の道光庵がとても繁盛していたのでそれにあやかったとされるほど、「寺」と「蕎麦」は強く結びついています。江戸時代中期には蕎麦屋の数が多く、出前もしていたために、町内の蕎麦屋から出前を取る風習はよく見かけられるもので、節分の際には恵方の蕎麦屋から出前をしてもらっていたのかもしれません。
近頃「節分蕎麦」は関西発祥の「恵方巻」に席巻された感がありますが、昔から蕎麦は「本朝食鑑」などにも見られるように、新陳代謝により体内をきれいに清浄にするという健康食品です。今年の節分には是非「節分蕎麦」をお召し上がり下さい。
2015年の立春は2月3日、一方旧暦の元日は2月19日でかなりの開きがあります。おそらく江戸時代の人々は大晦日に「年越し蕎麦」を食べ節分にも「節分蕎麦」を食べたと思われます。数日のズレならまだし半月近くもずれてしまえば別ものと考えるのが自然です。