晦日蕎麦と年越しそばは同じ?何時食べるのが正解?

年越し蕎麦の素朴な疑問

クリスマスのイルミネーションが輝きだす頃になると
「年越し蕎麦は何時食べるのが正解なのか?」
「年越しそばと晦日蕎麦はどこが違うのか?」
「晦日蕎麦と年越しそばは同じでしょ?」
「年越し蕎麦を食べるのは長生きのため?」
などのご質問をいただきます。
晦日蕎麦と年越し蕎麦の由来を混同しているようなので話を整理してみました。

年越し蕎麦の由来

由来については「長寿願望説」のほか「大店慣習説」「厄払い説」「金運向上説」など蕎麦研究の第一人者新島先生がその著書「蕎麦歳時記」で詳しく書かれています。

長寿願望説

蕎麦の形状が細長いことから細く長く長寿を願うとする説

厄払い説

蕎麦は切れやすいので前年に起こった嫌なことに区切りを付けて新年を迎える

金運向上説

金細工の職人が金粉を集めるのに蕎麦を使用したことにあやかり金運を引き寄せる願いを込めたという説

晦日蕎麦とは

晦日蕎麦(みそかそば)は商店などが月末は忙しいのでファストフードとして食事を手早く済ませて仕事に戻るため蕎麦を食べた慣習で、当然その理由は食事時間の短縮です。晦日そばを食べる時間、食べるタイミングは食事の時間です。毎月月末は掛け売りの集金日だったことから、月末は忙しく夏のお盆の季節と年末は特に忙しかったようです。

大店慣習説

晦日蕎麦とは参照

農林水産省のホームページ

農林水産省のホームページ 行事と食文化に以下の記載があります。
http://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/culture/gyoji.html
大晦日(12月31日の夜)とは、正月の歳神様を眠らないで迎える日。除夜の鐘をききながら年越しそばを食べる。細く長く寿命が延びるように願うとされる。

年越し蕎麦は神事

本来年越し蕎麦とは新年を迎えるための儀式であり、歳神様をお迎えするための準備を整え身を清め歳の境である除夜の鐘と共に蕎麦を食し新年の幸福をお祈りするためのものです。なので年越し蕎麦を食べる時間は除夜の鐘を聞きながら食べるのが正解です。

特別な蕎麦

年越しは農林水産省のHPでいうように、歳神様を眠らずに(除夜)お迎えする儀式です。

昔の考え方で、一日の終わりは日没。つまり大みそかの夜はすでに新年という概念です。だから禊(みそぎ)をし歳神様をお迎えするイベントを行いそのイベントが終わってからの祝宴の料理として「年越し蕎麦」が出された歴史があります。

大阪の蕎麦

うどん文化の大阪(関西)でも、昭和の風景として「年越しそばを出前してもらって除夜の鐘を聞きながら晴れやかな気持ちで食べた」ことが「聞き書き・大阪の食事」に書かれているくらいですのでうどん文化圏でも年越しの蕎麦は特別なものだったようです。

神事の行われる時間

神事は夜に行われることが多く式年遷宮などで暗い中を神様がお移りあそばすシーンをテレビでご覧になった方も多いと思います。先日行われた皇位継承儀式の大嘗祭も14日夕から15日未明にかけて行われました。

年越し蕎麦・結論

年越しそばを晦日蕎麦の延長としてとらえたことから年越しそばを食べる時間が夕食時だったり深夜だったりと分かれてくるわけです。神事は夜行われることや除夜の鐘が今よりずっと聞こえたであろう環境、様々な文献に見られることなどを鑑みますとやはり年越し蕎麦は除夜の鐘を聞きながらお召し上がりいただくことが正解です。
但し年越しそばにもそのいわれは諸説ありますし、地方によって慣習の違うところもありますので絶対コレ、これ以外はダメと言い切ってしまうことなくおおらかにとらえることがいいように思います。

昭和中頃のそば屋事情

「そんなことを言っても除夜の鐘が鳴りだすころまで出前している蕎麦屋なんか無い」とお思いでしょうが昭和40年代頃までは大晦日といえば深夜あるいは明け方まで店を開けていた、あるいは出前をしていたと蕎麦屋の長老たちは口をそろえて言っています。
年越しそばを食べる時間があやふやになってしまった原因の一端は蕎麦屋自身にもありそうです。あくまで私の想像ですが、深夜に集中する注文に対応しきれず「どちらも同じ」などと言っていたのかもしれません、お客様も「混んでいるいる時間を避けたい」という思いが手伝って年越し蕎麦が晦日蕎麦と混同されていったのではないか、と想像しています。

除夜の鐘と年越し蕎麦

文部省の資料(大正10-15)によれば江戸時代の神社総数は約46万ヶ寺とされていて、現在の総数約7.5万ヶ寺に比べずいぶん多かったことがわかります。
すべての寺院が除夜の鐘をついたとは思えませんが、当時はいまより音を遮るものも無くかなり遠くまで鐘の音が響いたと思われ、「年越し蕎麦」を食べるタイミングになったことと想像できます。
除夜の鐘を聞きながら食べる年越しそばはやはり非日常の特別な蕎麦です、大晦日はご自宅で「年越し蕎麦」を是非お召し上がりいただきながら歳神様をお迎え下さい。

年越し蕎麦私見

やはり私は「年越しそばは除夜の鐘を聞きながらお召し上がりいただくのが正式なあり方だ」と思います。
蕎麦屋が深夜まで営業しなくなってしまった現代では、年越し蕎麦も通販やお取り寄せで年越し蕎麦を御召し上がりいただく時代なのかもしれません。
当店も美味しい年越しそばをお召し上がりいただけるよう簡単レシピ付きの年越し蕎麦を通販でお届けします。その他ギフト商品もご用意してご注文をお待ちしております。

参考文献
世界大百科事典/蕎麦の辞典/大阪の食事/蕎麦史考/蕎麦歳時記 他

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