新そばの季節です

「新蕎麦」とは秋蒔きの蕎麦で9月から11月に収穫された「秋新」と呼ばれる蕎麦のこと【その年の秋に収穫された蕎麦のこと】です。その時期に収穫された蕎麦が特に風味の強い時期なので「新蕎麦」と呼び薫り高いこの時期の蕎麦を是非ご賞味ください、としているわけです。

江戸時代中期に蕎麦屋が爆発的に増えますが、その原因のひとつがこの「新そば」です。初物(はつもの)はお殿様に献上された後に市場に出回ることから、宵越しの金は持たないといわれる江戸っ子は初物が大好きで値段がこなれるまで待てずに飛びつきます。何しろ新そばは薫り高く風味も強く、特にお蕎麦の美味しいこの季節を江戸っ子は心待ちにしていたと言われ、「大江戸美味草紙」には蕎麦の香りに吸い寄せられるように、店の前へ行列が出来るという句が紹介されています。

新そばは物も言わぬに人が増え(大江戸美味草紙より)

この「新そば」の時期については各店舗によって考え方に統一性はないようで、特に最近は保存技術が向上し時間がたっても以前に比べてさほど劣化が見られないので「新そば」は昔に比べ長く楽しめる傾向にあります。そばは熱が加わると香りがとんでしまいますが、低温倉庫で大切に保管され、さらに以前は安価に製粉できることから熱の加わるロール挽きが多用されましたが、最近はより劣化の少ない石臼挽きが主流です、またロール挽きにしても回転数を落として熱の発生をぎりぎりまで抑えるなど製粉会社では様々な工夫をしています。そうした理由から当店ではおおよそ3カ月程度は「新そば」としております。

製粉会社の出荷状況を見ても各社まちまちで、「新そばに切り替わってからおよそ1カ月」とする会社もあれば、「厳密な規格が無いので毎年バラバラです」という会社もあったりします。

南北に長い日本では長い間収穫したての新そばをお楽しみいただけますが当店の主な取引先である長野県の蕎麦粉屋さんでは11月いっぱいが新そばの季節としているようです。新そばは風味もあり薫り高いお蕎麦の美味しい季節です、この時期ならでわのおいしい新そばを是非お召し上がりください。